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厚生労働省資料から読み解く、これからのキャリアコンサルタントに求められる力

厚生労働省資料から読み解く、これからのキャリアコンサルタントに求められる力

未分類

2026.8.10

2016年のキャリアコンサルタント国家資格化からまもなく10年が経とうとしています。この間、DXやAI技術の進展による労働需要の変化、人生100年時代における働き方の多様化など、社会情勢はかつてないスピードで激変しています。

これからの時代、私たちキャリアコンサルタントはどのようにアップデートしていくべきなのでしょうか。今回は、厚生労働省の最新の報告書「経済社会情勢の変化に対応したキャリアコンサルティングの実現に関する研究会」(令和8年1月発表)から、重要なポイントをダイジェストでお届けします。

 

●出典元

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_68994.html

●執筆 

水野 みち

株式会社日本マンパワー キャリアドック事業本部長
キャリアのこれから研究所 所長

1支援パラダイムの転換:「解決型」から「開発型」へ

すべての領域において共通に追加・強化が必要な能力として最初に掲げられていたのが、「開発型」の支援でした。開発とは、英語ではDevelopment。これは成長、発達、形成とも言えますが、組織の文脈では、「開発」という言葉が使われることが多いようです。

 

環境変化が激しく、複雑性の高い現代においては、正解が分からない場面も増えています。また、多数派にとって良い選択が、その人自身にとっての最善とは限りません。だからこそ、問題解決そのものを目的化するのではなく、変化に対応し続けられる力を育む視点が、これまで以上に重視されるようになっていると言えます。

 

 

報告書では、「自らキャリアを形成する力」「自分を継続的に高め続ける力」を身につけることを支援する「開発型」のアプローチが強く求められていることが記載されています。

 

<以下、報告書より引用>

「労働者が自身の職業人生において目指す姿、将来ありたい姿を自ら設定し、その実現のために必要な職業・職務の選択や能力開発などの課題を明らかにした上で、課題の達成に向けて取り組み、最終的には労働者が自らキャリアを形成する力、自分を継続的に高め続ける力を身につけることを支援する『開発型』の支援を行うことが求められる。」

「開発型」の説明に関連して、注目すべきは、「自ら」「自身の」「自分を」という言葉が多用されている点です。つまりは、相談者の能動性・自主性・主体性を伸ばすということの表れです。組織内ではこれらを「自律」という言葉で表現されることが多いです。

また、自律とは「一人で頑張ること」ではなく、支援や関係性を活用しながら主体的に選択していく力とも言えます。

【ポイント】
日々の面談で、相談者が自ら考え、自ら選択し、自ら行動できるような「開発(成長)」の支援を意識できていますか?

 

こうした「開発型」の視点は、もちろん近年急に生まれたものではなく、カウンセリングやキャリア支援の現場では以前から重要視されてきた考え方です。

日本マンパワーでも講座開設当初から大切にしてきました。なぜなら、キャリア課題の多くは、そもそもいつの時代においても複雑で発達を要する課題だからです。

今、国家資格化から約10年が経過し、あえて「開発型」が強調される必要があったとしたら、その意味を改めて考えたいと思います。社会情勢の変化によって、選択肢の多様化や価値観の違いが、より可視化されるようになったことが大きいとも言えます。それに伴い、これまで以上に「成長支援」のかかわりができるキャリアコンサルタントが必要とされているのではないでしょうか。今、当社の講座を選択してくれる人が増えているのもそんな時代のニーズの現れのように感じます。

 

「自律」を語る上で、大切になってくるのは人の「心」です。キャリアを支援する者として、より一層「心の複雑性」への感度や専門性を高める必要性のある時代になりました。

 

プログラム開発を行ってきた際に大切にしてきたのは「自己概念」に注目するという視点です。この自己概念の変化や成長のプロセスを、対話を通じて支援する考え方の一つが、JCDAの提唱する「経験代謝」です。

ここで言う「自己概念」は単なる性格理解ではなく、「自分は自分をどんな人間だと思っているか」という、自分自身の捉え方です。これは周囲や外側の世界をどう捉えるかにも現れます。

 

自分をどう捉えているのか。
周囲や社会をどう捉えているのか。
そして、何がその人の原動力(エネルギー)となっているのか。
さらに、そこにどう関わると、自己への信頼や自己概念の変化が生まれるのか。
主体的行動につながるのはどういう時なのか。このような心理的プロセスへの理解とかかわりの精緻化が大切です。

 

同じアドバイスを受けても、人によって前向きに受け取れる場合と反発を感じる場合があります。何が違うのでしょうか?自分事として感じられるようになるには、何が必要なのでしょうか?

 

個人の内面で起こる「違和感」や「ゆらぎ」の感覚を深めると、「気づき」のきっかけとなり、成長につながっていく。そういう意味からも、開発型(成長)支援は、悩みを「問題」とは捉えていないとも言えます。また、外から見たら一見成功しているように見える人にとっても役立つ支援だと言えます。

2全領域共通で「追加・強化」が求められる能力

(1) 最新の将来予測を踏まえた情報の活用

AIなどの技術革新による新たな知識・技能の必要性や、業界ごとの労働需要の変化など、「将来予測」も含めた最新情報を収集・分析し、相談者の自己・仕事・環境理解を深める支援が求められます。

(2) 組織・環境への働きかけ(アドボカシー支援)と連携

1対1の面談にとどまらず、労働者のキャリア形成を促進する環境整備のために、組織や社会に対して働きかけること(アドボカシー支援)が重要です。また、多様化する課題に対応するため、他領域のキャリアコンサルタントや他職種の専門家と連携し、適切なリファーを行う力も不可欠です。

(3) AI等デジタルツールの適切な活用

キャリアコンサルティングの質を高めるツールとしてAIを活用する機会が増えています。AIが提示する情報の「正確性や妥当性を見極める力」や、倫理的問題が生じない形で効果的に活用するリテラシーが求められています。

 

【ポイント】
社会動向や国際情勢をふまえて将来予測に関心を持っていますか?
組織や社会への働きかけをどの程度できていますか?
AI等の最新デジタルツールをどの程度活用していますか?
AIを活用する際の注意点やリスクなどを吟味できていますか?

 

キャリアコンサルティング領域でも、AI活用は急速に広がり始めています。例えば、次のような活用場面があります。
・求人情報や業界動向の整理
・職務経歴書や応募書類のたたき台作成(※個人情報は入れない)
・キャリアの棚卸し支援
・自己理解ワーク
・学習計画の整理
・面談記録の要約(※固有名詞は削除した上で)
・研修設計のアイデア出し
など、実務を支援するツールとして活用される場面が増えています。

 

一方で、相談者の感情や葛藤、人生背景に寄り添いながら関係性を築くことは、人にしかできない重要な役割です。AIが得意な領域と、人だからこそできる支援を見極めながら活用していくことが大切です。

組織・環境への働きかけとして、「アドボカシー支援」という言葉があります。これはどういう意味でしょうか。例えば、「育児と仕事の両立が苦しく、管理職を諦めようと思っています」という社員がいたとします。

個人支援であれば本人のキャリアテーマを深めて成長につながる支援ができます。例えば、職場に貢献できない罪悪感、人に頼れない自分の葛藤などが隠れているかもしれません。

 

しかし面談を重ねるうちに、次のような組織課題が見えてきたとします。
• 同じ悩みを持つ社員が多い
• 制度はあるが利用しにくい
• 管理職の働き方が長時間労働前提

それであれば、以下のような働きかけを行うこともできるかもしれません。
• 人事部へ実態を共有する (守秘義務を守り、個人が特定されない情報のみ)
• 制度改善の必要性を実態調査・提案する
• 両立中の社員向けのコミュニティやサポートグループを企画・運営する
• 管理職向け啓発研修を企画・提案する

 

これがアドボカシーです。つまり、「この人を支援する」という視点から「同じ問題が起きる“環境”を変える」へ支援を広げるということです。個人の適応を支援するだけでなく、個人が力を発揮しやすい環境づくりに関わることも、これからのキャリアコンサルタントに求められる役割だと言えるでしょう。また、その際には、個人の成長支援と組織の成長は対立するものではなく、むしろ相互に支え合う関係にあるものだという視点の啓発も欠かせません。

3活動領域ごとに高度化する専門性

活動の場が広がるにつれ、各領域(企業、需給調整、教育、地域・福祉)における専門性もより明確化されました。

 

・【企業領域】
経営層や人事部門に対し、客観的データを用いて「従業員の自律的キャリア形成」の重要性やセルフ・キャリアドック導入のメリットを伝え、組織の環境整備や課題解決に向けた協業を行う力が求められます。

 

・【需給調整領域】
労働市場の最新情報を常に把握し、他社や他業界の類似職種との違いまで踏み込んだ精緻な業務分析を行う力や、求職者・求人者双方に対して希望条件や採用条件の再設定を働きかける力が求められます。

 

・【教育領域】
変化の激しい社会でも生涯にわたり主体的に能力開発に取り組める基盤を作る「キャリア教育」の推進や、企業ニーズ等の分析結果を学内のカリキュラム設計に提供し協力する力が求められます。

 

・【地域・福祉領域】
多様な属性・背景を持つ相談者に対し、各種ツールを活用した丁寧な見立て(アセスメント)を行い、支援機関や家族とも連携しながら、就労や社会参加に向けた段階的支援が求められます。

 

また、自身の活動領域以外の領域で求められる能力についても意識的に学ぶことが、他領域とのスムーズな連携において重要だと指摘されています。

【ポイント】
ご自身のメイン領域の専門性を深めつつ、他の領域のキャリアコンサルタントと連携するために、他領域の最新動向にどれくらい触れていますか?

 

なぜ、他の領域を知る必要があるのでしょうか。私自身、企業内領域に長らく携わる中で、教育領域にも触れる機会が何度かありました。小学校の特別活動やキャリア教育など。キャリア・パスポートや対話型・探究型の教育プログラムを見て、今の教育の変化や、変わらず維持されているものを目の当たりにしました。おかげで新入社員がどのような経験を経て入社してくるのかといった視点が膨らみました。

 

また、生活保護受給者のキャリア支援の現場に触れる機会もありました。すると、いかに自分のものの見方や考え方が狭いものだったのかを痛感し、支援者として視野を広げる努力を怠ってはいけないという気持ちになりました。他領域に触れることで、自分の専門領域の深みが増すということも多々あります。

 

 

4これからの自己研鑽:実践的な学びの重要性

社会の変化に合わせて、私たち自身の能力開発のあり方も問われています。更新講習の受講や座学による自己研鑽だけでなく、「実践的な学び」が非常に効果的であるとされています。
具体的には、事例検討会での意見交換や、経験豊富な指導者から自身の成長課題に応じた教育的介入を受ける「スーパービジョン」が、知識・技能の向上や実践力強化、さらには倫理的ジレンマへの対応力を高める上で強く推奨されています。

【ポイント】
ご自身のキャリアコンサルティングを客観的に振り返り、専門家から指導やフィードバックを受ける機会(スーパービジョン等)を持てていますか?

 

 

スーパービジョンを受けることは、時間も費用もかかります。わざわざ受けなくても困らないと思うかもしれません。しかし、自己研鑽を続けることは、専門職として大切な責任の一つでもあります。

ピアノの調律と同じように、定期的に自らをふりかえり、支援者としての関わり方や状態を点検し続けることは、とても大切です。

私たちが扱うのは「人の心」であり、その支援を行う自分自身もまた、重要な支援資源です。自分の価値観や思い込み、感情の動きに気づきながら、より良い支援のあり方を探究していく。
その意味でも、スーパービジョンは知識や技能を磨くだけでなく、支援者としての自己理解を深める貴重な機会だと言えます。

 

5おわりに

社会情勢が不確実性を増す中、自律的なキャリア形成を支えるキャリアコンサルタントの役割は、これまで以上に大きくなっています。目の前の相談者に質の高い支援を提供するとともに、組織や環境へも働きかけていく。

報告書から読み解ける内容を一つの道しるべとして、ぜひご自身の今後の能力開発(自己研鑽)の方向性やテーマを見つける一助になれば幸いです。

私たち養成団体としても、こうした時代の変化に対応できるよう、学び続けられるプログラムや実践コミュニティづくりに積極的に取り組んでいます。キャリアコンサルタント養成講座や更新講習はもちろんのこと、キャリアコンサルタントの寺子屋(通称:キャリテラ https://career-terakoya-online.com/about )
にもぜひご参加ください!

 

※本記事は厚生労働省「経済社会情勢の変化に対応したキャリアコンサルティングの実現に関する研究会」報告書および関連資料に基づき、水野個人の見解を添えて作成しています。

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